WARAKUSHA

2021.06.06

「感染症に強い」これからのクリニックの設計ポイント

長引くコロナ禍で、
多くの施設や店舗で建物の使い方が一変しました。
中でも病院・クリニックや福祉施設は
一般的に免疫力の弱い方の利用が多く、
新型コロナウイルスに限らず将来にわたり、
「感染症に強い」施設づくりが求められています。
このような背景をふまえ、本コラムでは
「これからのクリニックに求められる設計ポイント」
についてお話しいたします。


【目次】
1.屋外診察と駐車場
2.受付・待合の飛沫対策
3.トイレと手洗いの位置
4.隔離室と換気
5.スタッフルームと休憩

1.屋外診察と駐車場

 

発熱のある初診患者さんに対して、
屋外駐車場で検温・診察をされるようになった
先生方も多いのではないでしょうか。

雨天時の屋外診察対策には、駐車場に車寄せ等の
屋根のある空間を広く設けることで応用が可能です。
特にドクターが直接外に出られる場合には、
待合室を通らず、通用口から雨に濡れずに
車寄せまでアプローチできる動線を確保しておくと
屋内運営との連携もスムーズです。

ちなみに
車寄せは通常時はご家族の送迎等で重宝されるため、
WARAKUSHAで設計させていただく医院や
福祉施設でも可能な限りゆったりと確保しています。

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2.受付・待合の飛沫対策

 

これから施設を計画する際には、
受付の飛沫飛散防止パネルの検討を
設計段階から行うと機能が高められ、
デザイン上も美しく納まります。

後付けで工事後にビスで留め付けたものや
ビニルカーテンなどは
見た目上も応急処置的になり、
運用面や衛生面でも扱いにくくなりがちです。

患者さんに手渡しする物のサイズなどもふまえ
パネルの位置や取付方法を決定すると、
機能とデザインが空間に馴染みます。
また、透明パネルはこまめに拭き取りができ、
照明の光や暖房の熱などの影響を受けにくい素材を
選ぶことも大切です。

ここで注意したいのは、
会話の聞き取りについてです。
透明とは言え隔て壁ができることで
音声は遮られ、
言葉を発する唇の動きも見えずらくなります。
特に高齢の患者さんが多い医院などでは
アクリルパネルにスピーカー・マイクを組み込むなど、
どんな方も気持ちよく受付が利用できる方法を
設計者に相談されてみてはいかがでしょうか。

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ゆったりした席配置の待合室。
換気面・心理面ともに安心な、外の空気が感じられる空間。

3.手洗いの位置

 

私が他院の話として見聞きした中には、
トイレに手洗いがなく、広い廊下を渡った向かい側に
洗面コーナーが配置されていたケースがあります。
これでは感染症対策にならないのはもちろん、
衛生上も良くありません。
スペースが許せば多目的トイレとした個室内に、
そうでなくてもトイレのエリア内には
手洗いを設ける前提とすると良いでしょう。

また、毎日多数の利用者が通う福祉施設等では
出入口で手が洗えるよう、玄関部に洗面コーナーを
設けることをおすすめしています。
屋外活動から帰ってきた際にも自然な動線となります。

現在の傾向として、
手洗いの水栓(蛇口)は自動水栓が主流になっています。
非接触型を基本とする設備計画は、
患者さん用だけでなく、スタッフ用においても
今後必須とした方が安心です。

ただし需要が急激に増えた2021年現在では
数か月単位の納期がかかる場合もありますので、
特に改修等でスケジュールに余裕がない場合には
早目に設計者に相談されることをおすすめします。

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4.隔離室と換気

 

待合室とは別に隔離室を設ける場合には、
換気計画でもウイルスまん延防止の対策ができます。
換気設備には給気と排気の二種類があり、
給気が強い換気設備はクリーンルームなどに用いられ、
室内にウイルスや粉塵を寄せ付けません。
逆に排気が強い換気設備はトイレなどに用いられ、
その室から屋外へウイルスや臭気などを逃がします。
クリニックで言うと、
待合室を給気型、隔離室を排気型とすることで
感染症対策に有効な換気計画となります。

5.スタッフルームと休憩

 


スタッフの休憩時間の過ごし方が
コロナ禍を境に変わったというお話がほとんどです。
机を大勢で囲み会話しながら昼食を摂る状況は、
残念ながらこのご時世では好ましくありません。

机のレイアウトで言うならば、
全員が壁を向いて座るスタイルであっても
カフェのカウンター席のように机上に窓を設けるなど、
少しでも閉塞感を和らげる工夫が必要となってきました。

スタッフが各々リラックスしながら
思い思いに過ごせるインテリア計画とすることは
ウイルスの流行に関わらず普遍的な理想でもあります。
ストレスを溜めない空間づくりは、
スタッフの免疫力アップのためにも今後さらに
重要な要素となってくるでしょう。

6.まとめ

 

今回のコラムでは、
「感染症に強い」施設づくりのための設計ポイントを
ご紹介しました。

今回ご紹介の事例

鈴木内科様
なごみクリニック様
林齒科医院様

また、無料進呈の「医療・福祉施設設計事例集」では
実際の施設について詳しくお伝えしております。
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この記事は私が書きました

WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士

山﨑 正浩

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