WARAKUSHA

2021.10.29

デザインで清潔感あふれる医院に!3つのポイント

身を任せて治療・ケアを受ける場である医院・クリニックは、
あらゆる施設の中でも最高水準の清潔感が求められます。
医院建築の清潔感は「あれば好ましい」ものではなく、
医療技術の高さを表現し信頼を得るために欠かせない要素なのです。
院内の清掃が行き届いていることはもちろん、
空間デザインによっていかに清潔感を演出できるかが鍵になります。
デザイン検討の際には、大別すると
「動線」「色と光」「空気」
という3つのポイントを抑えることが有効です。
それでは、これらの具体的な内容についてご紹介していきます。


【目次】
0.清潔感のある空間とは?
1.動線 ...視界をスッキリさせる
2.色と光 ...自然な清潔感を演出する
3.空気 ...清浄な空気を循環させる

0.清潔感のある空間とは?

私達人間は、目の前の空間のあらゆる要素を組み合わせて「清潔感」を認識します。
そこには「片付いている/汚れやホコリがない」といった物理的な状況はもちろん、
「明るく広い感じがする」「居心地が良い」「空気が爽やかに感じる」
などの心理的な要素も大きく関係してきます。

清潔な空間づくりは、建物の設計段階から始まっているのです。

1.動線 ...視界をスッキリさせる

視界に様々な情報が入ってくると、
無意識のうちに脳はその空間を「雑多である」と認識してしまいます。
モノが沢山置いてある場合はもちろん、
例えば周囲を頻繁に人が行き来するのも視界に入る情報が多い状態です。
よって、「見せるもの」と「見せないもの」を動線計画により適切に分類できるかが、
クリニックの清潔感を大きく左右します。

【受付】

クリニックの第一印象を司る受付まわりですが、
一方で必要な書類や備品が多く、運用する中で散らかりやすい場所でもあります。
モノが患者さんから見えにくい設計とすることで、
スッキリとしたホテルライクな空間を保ち続けることができます。

受付まわり.JPG受付まわり。
扉付きのカルテ棚で書類が見えない仕様に。
カウンター内、スタッフ側には低めの机を設け、
手元が隠れるよう設計している。

【待合室】

待合の患者さんの視界に「ノイズ」が入らない動線計画を検討しましょう。

例えば
待合ソファからトイレの出入りが見えたり、
受付スタッフの視線を感じたり、しないでしょうか。
スタッフ動線と患者さんの行動範囲は、
互いに干渉しないでしょうか。
窓の外の通行人の視線にも配慮したいところです。

などに留意します。

視線検討.jpg受付スタッフ席から。
患者さんの様子は把握しながらも、
互いの視線が交差しないよう角度を振っている。


植栽.jpg待合室と植栽。
外部からの視線対策を兼ね、室内にいても緑が見える坪庭を設けている。

2.色と光 ...「やりすぎない」清潔感

「清潔感」と聞くと、ホワイト系の色や明るい光をイメージする方が多いのはないでしょうか。
例えば待合室でも明るい色が基調の内装デザインを行い、
かつ大きな窓ガラスで十分な採光と透明感が得られるようにすると、清潔感が高められます。

ただし気を付けたいのは、
清潔感や清掃のしやすさを突き詰めると人工的な「やりすぎ感」が出てしまうこと。
いわゆる「病院らしさ」が強くなり、
無機質で落ち着かない印象を与えてしまいます。

 

【自然界の色や素材を採り入れる】

例えば白い色を選ぶ際、
「純白」を選んだ場合には年と共に汚れが重なり、
黒ずみや黄ばみが目立ってくることがあります。
アイボリーやベージュ系を選ぶと
年数が経っても色の変化が気にならず、
かえって清潔感を永く保つことができるでしょう。

アイボリー、ベージュ系は自然界に存在するアースカラー。
ストイックになり過ぎず優しい清潔感で、
温もりある空間が演出できます。

色づかいに加え、素材でも木やファブリックなど自然界のものを採り入れると、
より自然な仕上がりになるでしょう。

自然.JPG

 

【設計段階でできる掲示物対策】

運用の中で増えがちな掲示物は
サイズ・色・デザインがまちまちであり、
雑多な印象を与える原因になってしまいます。

掲示物を貼りすぎないことも大切ですが、
必要な情報を貼り出しつつ清潔感を保つには、
設計であらかじめ「掲示スペース」を
広く設けておくことをおすすめします。
掲示物全体を「枠」でひとまとめに囲うことで空間に統一性を持たせ、
整理整頓された印象を与えることができます。

掲示.jpg掲示スペース
木枠の中は掲示用の壁紙で、
マグネットの使用にも対応。

3.空気 ...清浄な空気を循環させる

【窓の位置を工夫する】

空気が淀みなく循環していることも、
清潔感を感じる上で重要な要素となります。

クリニックデザインにおいても、
換気設備に頼り過ぎずに換気が存分に行える計画が良いでしょう。
窓を開けて行う自然換気は通風や採光とセットになりますから、
開放的いっぱいの明るい空間とすることができます。
待合室の患者さんにとっても待ち時間が短く感じる、
心理的にもメリットが大きい方法です。

【塗り壁など自然素材を使う】

例えば壁の仕上を珪藻土など自然素材の塗り壁とすると、
壁の素材自体が「呼吸」して湿気や臭いを吸収・発散してくれます。

塗り壁は水拭きできないのがデメリットですが、
その弱点を解消した、類似素材の耐水性タイルも出ています。
トイレなどの水回りに使うことで、
湿気の籠りもずいぶんと解消できますよ。

タイル.jpgトイレ壁。
アクセントを兼ね、鏡の背面に
塗り壁素材のタイルを貼っている。

4.まとめ

クリニックの清潔感についてお話ししました。

写真の医院は、
無料進呈の「医療・福祉施設設計事例集」にて
詳しくご紹介しております。
お気軽に資料請求からお申込みください。

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この記事は私が書きました

WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士

山﨑 正浩

山﨑アイコン.JPG

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