色彩心理:「緑」の空間がもたらす効果
クリニックの空間づくりにおいて、造形や動線に加え、色彩心理を用いた「心のケア」のデザインも重要になります。
なかでも、私たちの心身の健康に欠かせない色と言われる「緑」とクリニックデザインの相性の良さは格別です。
空間の美しさと機能性を両立させながら、効果的に「緑」を取り入れるには?
今回は、その設計手法について詳しくご紹介します。

- 0.「緑」のもたらす心理的効果
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色彩心理学では、緑色には以下のような言語イメージがあるとされています。
・調和
・安全
・自然
・癒し
・生命力
・マイペース日本産業規格であるJISにおいても、緑色には「安全・救護」という意味が与えられています。
施設の非常口表示などが代表例です。
ちなみにJISの他の色では、赤は「禁止」、黄色は「警告」、青は「指示」等の意味があります。
身近なところでは、道路標識の数々で見覚えがあるかもしれません。
少し脱線しましたが、緑色は
「すべての人が互いに受け入れ調和しながら、リラックスして過ごす」
色として、空間で効力を発揮してくれるのです。- 1.目への負担が最も少ない
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緑は、人間の目に見える「可視光線」の中で、波長の長さの中央に位置する色です。

色の波長は長すぎても短すぎても人間の目には見えなくなり、その先は赤外線や紫外線等に変化していきます。
つまり、緑色は目への負担が少なく「見ていて最も楽な色」であるとも言えます。
クリニックのメイン内装など広い面積に採用することで、色彩が視界にやわらかく馴染み、視覚的な刺激が少なくなります。
設計事例:「和地たなか歯科」様- 2.心身を穏やかにする
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【心拍数が下がる】
和室の窓から庭の新緑を眺め、抹茶をいただく...。こんな情景に深い安らぎを感じる方も多いと思いますが、実は緑色の空間で過ごすと、他の色の空間に比べ心拍数が下がったという実験結果が数多く出ています。
【筋肉の緊張を緩める】
光(色)による筋肉の緊張度を「ライトトーナス値」という値で示すことができ、値が低いと筋肉が弛緩状態、高いと緊張状態にあることが示されます。
ライトトーナス値の最も高い色は「赤色」で、一般的なイメージとしても、力が入り興奮を誘発する色として知られているところです。筋肉と精神の緊張は連動するため、心身共にリラックス状態に導くには、ライトトーナス値が低い色を用いることが有効です。
ライトトーナス値が最も低い色は「ベージュ」と「パステルカラー」で、パステルの場合は何色でも同じ数値です。続いて「青」と「緑」において、筋肉の弛緩効果が数値で示されています。
例えばベージュと緑の組み合わせは、患者さんに身体の力を抜いてもらいたい診察室等に最適です。
【気持ちを鎮静化する】
緑や青などの寒色系の色には、気持ちを鎮めて集中力を高める効果があります。
診察においても、患者さんの緊張感やソワソワした気持ちを、穏やかにおさえてくれることでしょう。ただし緑と同じ寒色でも、青色の鎮静効果は、条件によっては強くなりすぎるので注意が必要です。不安感が強い時にいわゆる「真っ青」な色を見続けると、人によっては気持ちが落ちてしまうことも...。
クリニック等、心身の不調がある方が利用することが多い空間では、同じ青系統の中でも淡く優しいパステル調のブルーや、緑に近いターコイズブルーをおすすめします。- 3.体感時間が短くなる
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緑や青などの寒色系の空間では、赤やオレンジなどの暖色系の空間で過ごすよりも体感の時間が短くなる ― という実験データがあります。
これはクリニックの待合室にうってつけです。緑の待合室で過ごした患者さんは、待ち時間の心理的負担が軽減され、「案外すぐに診てもらえた」という感想が多くなるかもしれません。ちなみに赤系の空間は体感時間が長く感じる分、短時間の滞在でもお客様の充実感・満足感が大きくなる傾向にあることから、飲食店の内装などに特に有効です。
赤などの暖色系は「食欲を刺激する色」とも言われ、飲食店のイメージカラーとして旧くから好まれてきたことも納得ですね。WARAKUSHA(和楽舎設計工房)でも、鰻専門店さんの内装色に赤系を配色しました。
お客様の満足度に色でも貢献できれば...との想いで選定した、「京緋色」という和の伝統色です。- 4.空間が広く見える
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色は、前に浮き出して見える「進出色」と後ろに下がって見える「後退色」という分類に分けることができます。
大まかなイメージとしては、暖色系や明るく鮮やかな色が「進出色」、寒色系や落ち着いた色が「後退色」です。
特に寒色系の後退効果は絶大で、かのレオナルド・ダ・ヴィンチも「5倍遠方にあるようにしたいなら、5倍の青さで描くこと」という言葉を残しているほど...!
インテリアに落ち着いた緑色を取り入れることで、その空間を広く見せることができます。


