WARAKUSHA

2021.01.27

クリニック設計の注意点 第1回:患者動線

0. 患者動線から見たクリニック設計の注意点

前回のコラムで、クリニックのデザインには
「顧客(患者)」「従業員(受付・医療スタッフ)」「経営者(院長)」
の「3者」皆が満足する動線計画が非常に重要であるというお話しさせていただきました。

この3者の具体的な動線について、3回に分けてコラムでお話ししていきます。
第1回は「顧客(患者)」の動線について。
治療や診察のパフォーマンスを最大限に発揮できるクリニックデザインについて、患者さんの来院から退出までの行動順にご紹介していきます。

【目次】
1. 来院:入口~受付~待合室
2. 診察、検査等:診察室、検査室、処置室
3. 退出:待合室~会計

1. 来院:入口~受付~待合室

【住宅地・郊外クリニックの駐車場づくり】
WARAKUSHAのメインエリアである静岡県西部において、車は生活必需品。多くのクリニック様で駐車場は必須であり、デザインの前提条件となります。
設計では院長先生が想定されている一日の来院者数をベースに、体調が優れない方や運転が苦手な方でも見つけやすく出入りしやすい駐車場を適切な台数確保します。そして雨の日の送り迎えを想定し、屋根のついた車寄せも可能な限り計画すると良いでしょう。
ユニバーサルデザインの観点では、浜松市の公共建築には車椅子対応駐車場を建物付近に一定数設けることが指針で定められているため、WARAKUSHAでは民間クリニックでもこれに準ずるよう設計しています。
また、自転車での来院に関しては、駐輪場から建物まで雨に濡れずに入れる動線計画とすると、雨の日には駐輪場で雨着を脱ぎスマートに屋内に入ってもらうことができます。

なごみOPS_3035-1.jpg写真手前から:雨の日も濡れない駐輪場、車寄せの庇、車いす対応駐車場。

【視認性とプライバシーのバランス】
クリニックデザインには、視認性とプライバシーという2つの相反する要素を満たす必要があると思っています。
初めての患者さんにも見つけやすく入りやすい雰囲気が求められる一方で、「自分が入る姿を近所の方に見られたくない」という患者さんも少なくありません。特にデリケートな標榜科目のクリニック様においては、アプローチや風除室の配置を工夫することでプライバシーをケアしていきます。

【土足・スリッパの今昔】
かつて診療所や医院では、患者さんが玄関でスリッパに履き替えて受付に行くスタイルが主流でした。しかし近年では、土足のまま診察室まで案内するスタイルがほとんどです。
これは昔の道路が舗装されておらず患者さんの靴が汚れやすかったという事情にも由来しますが、大きな理由はバリアフリーとホスピタリティに対する社会的意識の高まりであると言われています。
段差がなく土足のまま建物に入れるスタイルとすることで、車椅子のまま診察を受けられたり、患者さんの履き替えによる手間や混雑を解消できたりというメリットが得られます。

【待合室の快適性は「視線」と「距離」で決まる】
待合室の動線計画では、患者さんが「どこを向いて待つか(視線)」と「呼ばれたら診察室にすぐ行けるか(距離)」を基本とします。
「視界」については、特に受付との位置関係が大切です。受付スタッフが待合の患者さんの顔が見える位置にすると患者さんの体調の変化に気付くことができますし、患者さんも受付の様子がわかり安心感が得られます。かといって常に目が合う状態に正対してしまっては、お互いにどこか落ち着きません。「顔は見えるけれど視線は合わない」位置関係が理想です。
「距離」については実測のみならず、診察室まで迷わず行けるという心理的な距離感も影響します。動線計画の中でも、待合室から診察室までの動線は特にシンプルにすると良いでしょう。
そして、待合室はリラックスできる空間であることが大前提ですよね。WAKARUSHAではお庭や高窓など、緑や光をいっぱいに感じられる仕掛けを創ることをひとつの基準としています。

受付から見た待合ソファ。患者さんの正面は受付でなく坪庭の植栽

【受付時間前の対応方法でゾーニングを考える】
受付時間前などスタッフ不在の待合室に患者さんを通す場合には、どこからどこまでを施錠ゾーンとするのかを決める必要が生じます。例えば下図のクリニック様のプランでは、待合室とトイレのみ開放し(図内青色部分)、あとはシャッターやドアで区画し施錠しています(赤色部分)。呼び出しにはインターホンで対応可能です。

2. 診察、検査等:診察室、検査室、処置室

【中待合の要・不要の判断ポイント】
中待合は、動線上有効な場合とそうでない場合があります。
中待合が有効なのは、複数医師・複数科目の場合や診察と検査がセットの場合、レントゲンや採血に直接案内することが多い場合などです。患者さんにとってはプライバシー保護や歩行距離の短縮になりますし、スタッフも効率的に案内できます。
一方で院長先生が1人で診察される場合や検査が稀な場合など、中待合がかえって時間のロスの要因となってしまうこともあるのです。
診察と検査のオペレーションを想定して、中待合の要・不要を決定します。

【隙のない防音が患者さんを守る】
診察室の防音は、クリニック設計の中で最も重要な要素のひとつです。
標榜科目にもよりますが、症状について話す声が外に漏れることに大きな抵抗を感じる患者さんは少なくありません。
例えばこちらのクリニック様では、壁と天井の内側に防音材を入れることで隣室や上階への音漏れ対策を施し、隙間のできやすい引戸も防音仕様の特別なものを選択しました。

音漏れに配慮した診察室

3. 退出:待合室~会計

【診察室から出た瞬間、「注目」されないか】
診察室と待合室が隣接する場合、受診を終えた患者さんが待合の「注目の的」とならないよう動線を調整します。
医院空間の中心となる待合室。1.でご紹介した受付スタッフとの位置関係を含め、待合室の向きを調整することで動線が整理され、空間にリズム感も生まれます。

【会計時間短縮につながる設計ポイント】
会計時間を患者さん側で短縮できる方法は2つあります。「待っている間に荷物を整理すること」と「会計時にもらった書類や薬をスムーズにしまうこと」です。
前者に関しては待合のソファをゆったりとしたサイズにして手荷物を扱いやすくすること、後者に関しては受付カウンター前にバッグの置き台を設けることなどで対応できます。

4. まとめ

今回は「患者」にフォーカスしたクリニックの動線計画についてお話をさせていただきました。
次回コラムでは、「スタッフ」の動線計画についてご紹介させていただきます。
また、写真でご紹介した事例は無料進呈の「医療・福祉施設設計事例集」でも詳しくお伝えしております。ぜひ、資料請求からお申込みください。

今回ご紹介の事例       

なごみクリニック様

鈴木内科様

この記事は私が書きました

WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士

山﨑 正浩

山﨑アイコン.JPG

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